観客を魅了した『リトルチェリーズ玉江』
~ 熱血 大西 隆先生の教育 ~
「子どもでも、プロと同じ音が出せる」、「子どもだから、これくらいでいいと思えば、それだけにしか育たない」、小学生ジャズバンド『リトルチェリーズ玉江』を率いる鹿児島市立玉江小学校の大西 隆先生は、ご自分の教育信条をこう述べられています。
リトルチェリーズは、日本全国でもめずらしい小・中学生だけの編成によるジャズバンドです。1984年に鹿児島県の小学校に結成以来、徳之島と鹿児島市の小学校にバンドが引き継がれて20年間、校内や地元はもとより、各種コンクールやイベントに招待され、演奏活動は年間30ステージを下りません。特に1999年に開催された、第7回EU/ジャパンフェストの一環として参加したドイツでの「国際青少年音楽祭」、2001年と2003年の2回にわたるアメリカでの「グレンミラー音楽祭」などの海外公演は、いずれも大きな反響を呼び、アメリカではジャズの本場のプロバンドにも引けを取らない「世界で8番目の不思議」と絶賛され、リトルチェリーズは、子供バンドの「代名詞」的存在になっています。
今年も2007年6月7日から10日まで、アイオワ州クラリンダ市で開催された『グレンミラー・フェスティバル』において、パレード演奏やステージ活動を行ってきました。その帰途、ロスアンゼルスでも、JERC日米教育サポートセンターと鹿児島県人会の共催で開催されたジャズコンサートに出演。旅の疲れも見せず、大西先生の指揮のもと、全16曲の楽曲を披露し、集まった約300人の観客を魅了したのでした。
10歳から12歳の子どもたち、友達と遊んだりおしゃべりしたい年頃です。しかし、一つの目標を持っている彼らは、厳しい大西先生の指導のもと、毎日2,3時間に及ぶ練習に参加しています。
トランペットを担当するある男子生徒は、「プロのトランペッターになりたい」と語り、頼もしい発言に清々しい気分を味わいました。ぜひ、実現できるように応援したいですね。
大西先生は日頃から、「プロと同じ音を出せるようになりなさい、子どもだからこの程度でよい、というのは許されない。大人がこの程度でよいと思ったら、子どもはそれだけにしか育たない」と言われています。また「練習は、1日たりとも休んではいけない。1日休むと、元に戻ってしまうから」
と、毎日練習することの大切さを説いておられます。ここに、観客を魅了したあの“音”の秘密が隠されているのでしょう。
また、先生の個人を尊重する言動が、生徒の皆さんに伝わっていることを実感した場面も多々ありました。厳しさと優しさを併せもった、素晴らしい先生の人柄が伺えます。
いま日本では、「自分は将来なにになりたい」とか、「なにがしたい」という夢をもっていない子どもや若者たちが増えているようです。昔は、パイロット、スチュワーデス、お医者さん、看護婦さん等々、口々に夢を話したものですが、今の子どもたちからは、将来が語られなくなっています。
これは社会の責任でもあり、大人の責任でもあると思います。親や周りの大人たちが、子どもには素晴らしい可能性があり、能力があることを認め、引き出してやることです。
「子どもだから無理」と考えるのではなく、「子どもでもできる」という発想で子どもを育てていくことが、学習面でも人格を形成していくうえでも、よい影響があるのではないでしょうか。
アメリカの教育のよいところは、子どもの優れた能力を誉め、伸ばしていこうと考えているところです。クラス分けやレベル分けのシステムもその一つでしょう。優秀な生徒へは、賞を与え公表しますが、これは勉強面だけでなく、生活態度や学習態度も評価に値します。
このような環境が、子どもたちの意欲を掻き立て、自分のもっている能力を発見することにもつながるわけです。それが、将来への職業につながれば、こんな素晴らしいことはありません。アメリカの「誉めて育てる」という教育は、このような育て方を云うわけです。
大西先生がまさに実践している、「厳しさ」と「個人の能力を認め、誉める」教育こそ、これから育っていく子どもたちに必要な教育と云えます。目をランランと輝かせながら、将来の夢を語る子どもたちの姿を見ていると、大人にも勇気が与えられます。
ジャズバンド『リトルチェリーズ玉江』の将来を大いに期待し、ロサンゼルスでの再演を楽しみにしています。
JERC日米教育サポートセンター
教育アドバイザー
岩永 留美