COLUMN

日刊サン「教育コラム」

母語が確立する8歳後半までに海外で育った子どもは、異文化での影響を受けやすいため、成長と共に 自分を見失う傾向があります。“自分は日本人である”という意識をしっかり持たせ、これからの人生を 根なし草にしないために、海外での教育には十分な配慮が求められます。

(自分は一体何人なの?)
例えば両親が日本人であれば、その子どもの母語は日本語です。しかし幼少期よりアメリカで育ち、プリ スクール、キンダーそして小学校教育を第二言語の英語で受けてきた場合、“アメリカ人”になってしまう のです。どの言語で学んだかにより、文化、習慣、考え方が身につくからですね。その子どもが中学から 高校へ進学する頃になると、大学進学、就職について自分の可能性を模索し意識するようになり、自分は 将来どこで生活しどのような仕事をしたいのか、悩むようになります。自分は一体何人で、何をして何処 で暮らせばよいのか・・・。

(異文化での教育の在り方)
異文化での子どもの教育は子どもの年齢、性格、滞在期間などを考慮する必要があります。幼少期に海外 に帯同することが、言葉の発達において最も危険であることを把握しておいてください。 8歳後半までは日本語のみで育て、第二言語をプッシュしない。日本の教育機関(幼稚園など)が通える 範囲にある場合、できるだけ日本語環境の園にお世話になりましょう。近くにない場合は、家庭で母親が 家庭教師となり、毎日の読み聞かせや平仮名の読み書きを教えることもできます。
海外在住の日本人家庭で、お子さんを現地校に通わせている場合、日本語補習授業校か塾等で日本語での 学習を継続されていると思います。小学4年生くらいから日本語での学習も難しくなりますが、義務教育 期間である中学3年生までは、頑張って学んでいただきたいですね。日本語力を伸ばせば英語力も付きま す。他の方法として、最近取り入れられているオンライン授業があります。通える距離に補習校や塾がな くても、オンラインで授業を受けることができますので利用されるとよいでしょう。
米国には全日制日本人学校が3校ありますが、日本人としてしっかり育てるために重要な役割を担ってい ます。国内と同じように日本語で毎日学習することで、子どものアイデンティティは揺るぎないものにな るのです。

(重要な家庭での教育)
日本人として育てるために、家庭ではできるだけ日本語で会話しましょう。日本の文化や習慣を大切にし 季節の行事などを伝えることで、日本という国を理解することができます。
夏休みなどに家族で日本への一時帰国もよいですね。いろいろな所へ出掛け多くの人と接する機会をつく り、楽しかった体験を思い出として持ち帰りましょう。日本の学校へ体験入学をするより、子どもの感性 を育むよい機会となるのではないでしょうか。

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