子どもの世界を広げる読書

日米教育お役立ち情報

~ リーディング・タイムをつくりましょう ~

幼いころに大好きだった絵本、大人になっても、記憶の中に大切にファイルされていませんか?
「本」は子どもの世界を広げ、感性をゆたかに育む素晴らしい文化であるといえます。
『本をたくさん読ませたいのですが、なかなか読んでくれません。本好きな子どもに育てるには、どうしたらよいでしょうか』という質問を受けることがあります。本は楽しいものであることを実感するには、幼少期からの“習慣づけ”と、“環境づくり”が大切であることをお話ししています。
読書が好きな子どもは勉強ができる、と言われています。では読書の効用とは何でしょうか。本が好きな子どもに育てるにはどうしたらよいのでしょうか。

(1)読書の効用とは?

①語彙が増える/知識が豊富になる 
本を読むことによって、日常生活ではあまり使われない語彙に遭遇することができます。話し言葉と書き言葉は違う点からいうと、例えば、会話では「友達」と言いますが、文章では「友人」という言葉が使われることがあります。書きことばに触れることにより、語彙が増えていきます。
また、人が生活の周りから得る知識は限られています。いろいろな分野の本を読んで、知らない世界に飛び込むことで、知識は膨らんでくるのではないでしょうか。読書の効用として、もう一つ
大切なことがあります。世の中には様々な考え方がある、ということを知ることができるのです。

②日本語の構文を学ぶ 
日本語の本を読むことで、構文に触れます。主語、述語、目的語の並べ方、形容詞や接続詞の使い方、「こ・そ・あ・ど」、「て・に・を・は」などの使い方も学ぶことができます。

③抽象的言語の習得 
この抽象的言語が習得されていないと、現地校でも小学校3,4年からの学習が困難になります。抽象言語とは、目に見えない、手で触れることができない言語、そして頭の中でわかる言語です。これも現実にあり得ない話、いわゆるおとぎ話や昔話、伝説などの本をたくさん読むことによって習得していきますので、「ももたろう」、「さるかに合戦」、「一寸法師」など、面白いストーリーの本をたくさん読ませてあげましょう。
具体的言語から抽象的言語を理解すること、この移行が上手く行なわれるかどうかが、学習していくうえでの重要なポイントになります。

(2)本好きな子どもに育てるには

①家庭での「リーディング・タイム」をつくる 
毎朝、学校へ行く前の30分を読書の時間と決めている家庭があります。母親の作ったルールですが、子どももきちんと守っています。「学校の宿題が多くて、日本語の本を読む時間がない」という声をよく聞きますが、読書の時間は、意図的につくらないと取れません。朝でも夕食後でもよいですから、15分から30分を当てみましょう。

②環境づくり 
「親の姿を見て 子は育つ」といわれますが、本好きな子どもに育てるには、先ず親が本を読んでいる姿を子どもに見せることではないでしょうか。親がテレビばかり観ていたり、コンピューターにばかり向かっていると、子どももすぐ真似をします。親が本を読んでいると、自分も好きな本を抱えて横に座ってくることがあります。あまり本に興味がない子どもには、読み聞かせでもよいですから、毎日、就寝前に読んであげてください。次に「今度は、お母さんに読んで聞かせて」と水を向けてみましょう。得意げに読み始めるかも知れません。
部屋の本棚に、興味が持てるような本や図鑑をたくさん並べておく環境づくりも大切です。図鑑を見るのが大好きな子どもは、知識がとても豊富ですね。

③二言語環境での読書 
現地校で学んでいる子どもは、ブックレポートの宿題などもあり、英文の本も読まなければなりません。第二言語で本を読むとき、内容が理解できていないケースも多いですから要注意です。
学校の授業で使用される「Core Reading Book」 という、学年ごとにリストされた必読書があります。有名な本は対訳版が出ていますので、まず日本語版を読んで、次に英語版を読むと内容が理解でき、レポート作成の役に立つでしょう。
英語圏に滞在して2年程すると、読解力は2年生レベルに近づくようですが、中には、3年経っても読みの力がない子どもがいます。それは4,5歳のとき英語圏で育ち始めた子どもで、日本語で十分に読めない子どもたちです。時間がかかっても、日本語の本が読めるように努力させてみましょう。日本語の文章で読解力がある子どもは、英語の文章でも、読解力を早く身につけるようです。

子どもは初めて見たもの、初めて聞いたことに目を輝かせて感動します。体験だけでは得られないものを本から学ぶのです。いろいろな世界へ連れて行ってくれる本は、学習へのよい影響だけでなく心の栄養になりますね。さあ、今日から家庭での「リーディング・タイム」をつくりましょう。