滞在期間と子供の教育

日米教育お役立ち情報

~ 短期、長期で異なる教育 ~

海外に滞在する期間というのは、子供に対して精神面、教育面において、大きな影響を与えることになります。3年から5年の滞在の後、再度、日本の教育を受けなければならない子供の場合と、現地生まれ、または幼少期から海外で育っているケースで、この先も長期(永住を含む)に滞在する予定の子供の場合とでは、自ずと教育方針が異なってきます。
ただし、滞在期間に関わらず、必ず留意しておかなければならない事があります。それは、小学校入学までの幼児期の子供には、日本語教育を最優先にすることですね。小学校2年生頃までに日本語で学習能力を付けておくと、英語で学習する際に、よきサポート役になってくれるわけです。

1)短期滞在予定の子供の場合

大人にとっての4、5年の海外生活は短く、“仮の住居”と捉えられるかも知れませんが、子供にとっては、例え1年であっても、生育している場所を仮の住居とは考えられません。どこにいても、義務教育期間は学校教育を受けなければならず、教育を受けている場所、そこが彼らの“故郷”になります。
文化も習慣も異なった所で、第二言語で学習していかなければならない。日本へ戻る時には「入学・編入試験」を受けなければならない。その上、“逆カルチャーショック”を受けて苦悩する子供もいます。日々成長する子供に、“仮の住居”はありません。海外での生活を慎重に、かつ真剣に受け止める必要があります。
「ことば」の問題は、滞在期間に関わらず、すべての親の悩みになっています。現地校で学んでいくことを選択しても、短期滞在の子供は、数年後、また学習言語を変えなくてはならない現実にぶつかります。この点を、上手く乗り越えられるかどうかですが、英語でしっかり学んだ子供は、
日本語環境の中で、すぐに言語を習得していくでしょう。
また子供たちには、現地校で学習していても、日本語教育も受けなければならない理由をきちんと伝えましょう。日本へ戻る時のための準備ではなく、英語で学習していくために、母国語である日本語の支援が必要であることを。
滞在する年数は短くても、9歳までに何語で学んだかが、人間性に大きく影響しますので、日本での社会生活、学校生活への適応が懸念されるところです。

2)長期滞在予定の子供の場合

長期にわたって滞在を予定している方の場合、とにかく「英語習得」を急がれる傾向にあります。これから長く英語で学んでいくのだから、幼いときから英語漬けにしなくては・・・、と考えるのでしょうが、それならばなおさら、母国語で“言葉の柱”を作ってあげて下さい。8歳後半ごろまでは日本語を優先に。或いは、日本語で学習させることも選択の一つと考えてください。

二言語を同時にインプットしようとすると、どちらも習得に時間がかかり、なかなか英語での学習がままなりません。
海外で生活をしていると、言語の習得ばかりに気を取られていて、「学力」をつけることを忘れがちです。一つの言語で「書く力」「読む力」を養っておくことが大切です。また長年、アメリカで教育を受ければ、“よきアメリカ市民”になり、日本人としてのアイデンティティが揺るぎます。「根なし草」にならないよう、しっかりした人生設計を持たせることが大切ではないでしょうか。
長期滞在される方の場合、一貫して現地の学校で教育が受けられるのですから、徹底した教育が可能ですね。ある程度、日本語の基礎ができたならば、そのあとは、英語での学習に全力投球。
例えば将来、医学、法律、理系を志す場合、相当に高度な学力を求められるわけで、二言語を求めることは難しくなります。第二言語で学んでいくことは、容易ではないからです。

3)まとめ

海外での滞在期間が設定できなくて、教育方針が定まらないまま、時だけが経過してしまうことがあります。また、予定の滞在期間より短くなり、突然に帰国しなければならないケースもあります。思うように教育できないのが現状ですが、基本の方針だけはしっかり持っていることが大切です。①子供には、その時点でできる精一杯の努力をさせる。②まず「言語の柱」をつくる。③日本人としてのアイデンティティを大切にする。
日本独特の“駐在システム”の中で、将来を担う子供たちを決して犠牲にしてはなりません。また、永住するとは云うものの、アメリカという地で、どこか徹底できない子供への教育は、これもカルチャーの狭間で苦悩させるだけになります。
日本以外の文化や習慣、言語に触れるということは素晴らしいことです。滞在期間に関わらず、子供たちには、多くの国の人々との出会いを大切にして欲しいと願っています。