企業の駐在員として、あるいは永住するために米国での生活を始められる方へ、お知らせしておきたい大切なことをこのコーナーでお伝えしていきます。
異文化での生活はとても忍耐力を必要とします。言語も習慣も違う中で右往左往。お子さんを帯同されたならば、学校の問題や英語、日本語という言葉の問題も考えなくてはなりません。しかしこのような困難は家族が一丸となって協力していけば、きっとお子さんにとっての財産になります。頑張りましょう!
これから生活を始められる方は、まず住居を探さないと、と考えられる方が多いのですが、まずお子さんの学校探しを最初に行ってください。全日制日本人学校がある地域であれば、日本人学校か現地校にするかの選択をします。日本人学校に決められたならば、できるだけ学校に近い場所で住居を探されるとよいでしょう。
現地校(公立)と決められたならば、できるだけ治安の良い優良地域内の学校を選んでください。米国は優良地域イコール優良学校区なのです。とてもハッキリしていて、どのような生徒が在籍しているかによって、その学校のレベルが決まっています。通いたい現地校が決まりましたら、その学校で決められた地域内で住居を探しましょう。やはりできるだけ近い所がよいですね。
通う学校が決まり住居が決まりましたら、いよいよアメリカ生活がスタートします。これから子育てについてアメリカの学校教育について、そして海外での子どもの教育について大切なことを、皆さんにお伝えしていきますのでどうぞ参考になさって下さい。充実した有意義な海外生活を送っていただけるよう、私もサポートさせていただきます。お電話やメールでご質問、お悩みなどお寄せください。
ステップ①学校選び~現地校か全日制日本人学校か~
学校を選ぶ場合、通える範囲に全日制日本人学校があれば、現地校への編入か日本人学校への編入かの選択ができます。その際の判断をどのような基準で行えばよいのでしょうか。これはあくまでも長年の経験から、効率がよいだろうという観点からお伝えしております。個人差があるということを踏まえ、各家庭の教育方針で選択されることをお勧めいたします。
①駐在の方で 3 年以内に帰国する予定であれば、全日制日本人学校で学び学力を落とすことなく、日本の学校へスムースに戻り学ぶことができます。3 年間では英語力を身に付けるための時間が短いですね。学ぶところまで到達しないで、リスクだけ負って戻る可能性はあります。
②駐在が 5 年以上になる予定の方は、最初から現地校を選ばれてもよいでしょう。アメリカの教育、そして英語で学んだことで得た英語力は身に付いているものと思われます。
③永住予定の方は、長期で計画が立てられます。お子さんが幼児の場合、就学するまで全日制日本人学校でその後、現地校へ編入するのもよいでしょう。就学前から英語漬けにすることは、母語が育つことなく英語で学習することになり、言語の柱ができていないまま学習することになり、その後の成績への影響が懸念されます。要注意です。
④何歳で海外生活がスタートしたのか、これは学校の選択をする上で大きく影響します。就学前・・・母語である日本語が確立されていないことから、できれば日本式の幼稚園に入れてあげましょう。先生やお友達の話している言葉が理解でき、自分が思っていることを話すことができる環境が最適です。言葉が理解できない環境に置いておくことは、知能の発達の上でも、たいへん危険であると云わざるを得ません。8 歳後半までに母語は確立します。
小学校低学年・・・2 年生ぐらいまで日本語で学びその後、英語で学んだ子どもがいちばんバイリンガルになる可能性が高いと言われています。現地校で学びながら日本語でも学習することになりますが、最初から現地校を選ばれても、努力するお子さんであれば問題はないと思われます。
小学校高学年・・・現地校も全日制日本人学校も、4 年生くらいから授業内容が急に難しくなりますので、滞在年数によりよく検討される必要があるでしょう。現地校で学べば確実に日本語学習の学力は低下するでしょうが、日本人学校であればまったく問題はありませんので、よく検討してください。英語力ゼロで高学年からスタートする場合、本人の努力と親のサポートが必須となります。
中学生以上・・・将来、高校受験の問題が出てきますのでよく考えましょう。日本人学校出身で受験するのか、現地校出身者として受験するのかを選ぶことになります。それによって学ぶ学校が決まってきます。現地校は中学からレベル分けされたクラスで学ぶ教科があり、小学校とは違い一段と厳しくなります。
子どもの教育は、保護者の方の教育方針に沿って育てられることが大切です。そして海外ではお子
さんと共に歩む姿勢が強く求められます。ご質問がございましたらいつでもお寄せください。
ステップ②住居を決めて学校へ編入申込み
編入を希望する学校が決まりましたら、次に住居を決めることになります。保護者が車で学校への送迎をしなければならい学校区、スクールバスも利用できる学校区がありますが、できるだけ
学校から近い所に決められた方が宜しいでしょう。徒歩で通学できる距離ですと楽ですね。駐在のご家庭では、同じ会社の前任者の住居をそのまま引き継いで入居されるケースがあります
が、それもよい方法ですね。他方、現地のリアルターに依頼し、物件を探してもらいます。学校名を伝えれば居住エリアが分かりますので、その範囲内で探すことになります。
住居が決まりましたら、いよいよ学校のオフィスへ出向き編入の申請をします。その際、お子さんのパースポートを持参してください。学校側から書類一式が渡されますので、受け取って持ち帰りま
しょう。その中に医師に記入していただく書類があります。ホームドクターを決めてそのオフィスに出向いてください。その際、母子手帳(英文)も持参します。
提出書類が整いましたら再度、学校のオフィスに出向き提出します。その際、英語が母語でない生徒が受けるテストの日時が伝えられますので、後日、指定の場所へ行ってテストを受けましょう。
手続きなど終わりましたら学校へ通うことになります。システムや編入手続き方法等は、市の School District(学校区)によって異なりますので、各自ご確認ください。
ステップ③アメリカの学校教育
アメリカの教育は“民主主義を守るための教育です。国民ひとりひとりがしっかりと自分の意見を明確にし、発言できるように教育するわけです。
アメリカは連邦政府の教育局と各州の教育局があり、州内の学校教育に関しては州の教育局が管轄しています。そして各市に School District(教育委員会のような組織)を設けています。州としての学校の校則やカリキュラム、教育プログラム、そして各学年で指導する内容などは、州教育局が基本を決め、細かな事柄は School District や各学校で決めることができます。キンダーから 12 年生までが義務教育となっています。
学校教育のための予算は、アメリカでは不動産税で賄われています。移民のための英語教育プログラム「ESL プログラム」は、連邦政府の予算で行われています。家庭で話す言語が英語以外の生徒は学校でこの ESL プログラムを受け、ESL 生徒として扱われます。但し、外国人が少数の地域は、ESLプログラムを実地していない可能性があります。
アメリカの教育方法で特徴的なのは、子ども達にものの考え方をプロセスで教えていく「CriticalThinking」を取り入れた教育です。キンダーから高校まで、教師は教科を指導する中で、必ず生徒に質問をしながら進めます。ただ知識を与えるだけの教育ではなく、自分の考えや意見を持ちそして発言できるように指導しています。
キンダーからその教育は始まります。クラス内で生徒が順番に前へ出て話すのです。例えば自分が大切にしている物を持って来て、その物について説明をします。小学校になると新聞の中から一つニュースをピックアップして皆の前で発表します。質問も受けることがあります。
このようにアメリカの教育は、個性を育むため様々なプログラムを与えながら指導しているのです。
現地校のシステムは各州によって異なります。
(例)キンダーガーテン(1年間)― 小学校(5年間)― 中学校(3年間)― 高校(4年間)キンダーガーテンは小学校への準備機関で、教科を学び成績も付けられますので、キンダーに入学する前にプリスクールに通い就学のための準備をします。
小学校までは学級担任がいますが、中学校から決まったクラスが無くなり、生徒が教科担当教師のクラスに出向いて授業を受けます。また中学から成績によりクラス分けされている教科があります。
レギュラークラス、オーナークラス(成績優秀者)です。いつもチャンスを与える現地校ですが、例えば8年生で数学が優秀な生徒は、高校で9年生の授業を受けることもできるのです。
“ほめて育てる”が信条のアメリカの教育は、常に成績がよい生徒を表彰する行事があります。高校などでは成績優秀者には毎月校内で表彰している学校もあります。
公立の高校を卒業する場合、卒業資格試験に合格をしないと卒業できませんので、単位の取り方も含めて調べておくとよいでしょう。
ステップ④現地校で学ぶということ
英語圏の学校は当然、英語で教育が行われています。現地校を選択されたならば、“英語”で授業を受けなければなりません。そしてその国の教育方針にそった教育を受け、文化、習慣をも学ぶ、即ちそれが現地校で学ぶということです。
日本で教育を受けていた子どもが、保護者の仕事の関係でアメリカに引っ越すことになり、現地校へ編入されるケースが多いのですが、現地校は英語学校ではない!英語で学ぶ所です。このことは申し上げておきたいことです。日本語で学んでいた子どもが、身に付いていない英語で毎日、学習していくのですから、それはたいへんな努力が求められます。学習言語である英語を習得しながら、英語で学んでいくという学校生活が始まります。
先ず学習言語である「英語」を習得していきましょう。習得しながら学校で授業を受け、宿題をこなすことになります。言語としての英語は、家庭教師などのレッスンを受け習得していきます。宿題は保護者が手伝いながらこなしましょう。現地校は宿題の提出状況なども成績に影響しますので、期限までにきちんと提出することが大切です。学校でESLプログラムが実施されていると受けるのですが、このプログラムは移民のための英語教育ですから、進み方がゆっくりであまり進歩は望めません。
毎日の授業内容は理解できないのが当然ですから、できれば現在クラスで進められているチャプターは、家庭で簡単に内容を説明しておくとよいでしょう。いまクラス内で何の授業が行われているか、お子さんに情報が入っていると授業に参加し易いですね。
英語での学習が始まったからといって、これまでの日本語での学習をストップしてもいいのか、というと、それは継続していくことが大切なのです。日本語力は伸ばしていかなければなりません。なぜか?まだ英語で学習することができないからです。知識を吸収し情報なども得ることが出来ないからです。
知的発達に空白の時間をつくってはいけません。日本語補習校や塾で日本語での学習もしていきましょう。
二言語での学習になりますが、これまで日本語で学んだ学力を活用して、英語での学習へ少しずつ移行させることになります。このメカニズムを理解され、二言語で学習できる環境を整えてあげてください。
高学年になりますと、遊ぶ時間もないくらい二言語での学習に時間を取られますが、将来、子ども達の貴重な財産になります。保護者の皆さんは全面的にサポートしてあげましょう。
ステップ⑤海外での幼児期の子ども
就学前のお子さんを海外へ帯同される場合、成長著しい時期ですので十分に留意されて、有意義な 生活をしていただきたいと思います。幼児期は生活習慣や良い悪い、マナーの躾そして言葉の発達 など、人間としての基本的な土台作りが必要な時期と云えます。
①正しい生活習慣をつける
どこで生活されても、正しい生活習慣を付けましょう。先ず早寝早起き、朝昼晩のしっかりした 食事、うがい、手洗いの励行、排泄の練習。そして挨拶ができるように、遊んだ後の片付けは 自分でする躾もいたしましょう。
②ことばを育てること
子どもにとって「ことば」は、知能を発達させるためにとても重要な働きをします。3,4 歳から 急激に言葉を習得していきますので、先ず母語の習得に力を注いでください。 絵本の読聞かせ、日本のテレビで幼児番組の視聴、日本の歌を聴かせる、折り紙やあやとり等々 お母さんと一緒にお話をしながら楽しみましょう。このような活動で、親子のコミュニケーション を構築することができ、信頼関係ができてきます。
③プリスクールと幼稚園選び
2 歳を過ぎると、そろそろ社会生活を体験させたいと考えますね。近くに現地のプリスクールしか ない場合は、英語環境の中で育てることになりますが、日本の幼稚園がある場合、できれば日本語 環境に入れてあげてください。
ことばが理解できない環境の中に置いておくということは、母語が育ちにくいことから、知能の発 達や感性を育むことへの影響が懸念されます。言語により考える力や発言する力が育ちます。 母語で子どもの能力を育てておいて、小学校で学習していくことになります。
現地校は、小学校付属のキンダー(1 年)から義務教育が始まります。現地の教育を受けさせたい とお考えのご家庭、居住地域に現地の教育機関しかないご家庭、その場合は午前中だけ英語環境で、 午後からご家庭で日本語による活動を経験させてあげてください。
④就学までに教えておくこと
小学校へ入学するまでに、教えておくと良いことがいくつかあります。学校での学習がスムース に行われますので、現地校で学ぶか全日制日本人学校で学ぶか、どちらにしてもお子さんにとって重要な点を挙げておきます。
*母語である日本語を育てておきましょう。平仮名が読めるようにしておくこと、30 位までの数 の概念を付けておくことです。お子さんに興味があれば、平仮名を書く練習もしておきましょう。 鉛筆を持つ練習にもなります。
*人の話を聞く練習をしましょう。人の話を聞くことは非常に大切です。学校の先生の話が聞けな いと、学習に影響が出ます。現代はビジュアル系の機器が発展し、耳で聞くことが少なくなり ました。本の読み聞かせは毎日続けましょう。音楽を聴かせることもよいですね。 *思っていること考えていることを、発言できるようにしておきましょう。 ご両親から質問をすると、お子さんは答えを考えます。思考力を育てておくことも大切ですので、 幼稚園などでの様子など尋ねましょう。また考えたことを親や他人にきちんと話すという行動は、 子どもによってはプレッシャーになります。就学するまでに、楽しく会話のキャッチボールがで きるように、親子で練習をしておきましょう。
就学するまでは、先ず家庭での教育が大切です。手間も時間も掛かりますが、丁寧にお子さんに向 き合ってください。そして英語で学習する場合でも、母語の力がある子どもは抵抗なく学んでいく ことが出来ることを忘れないでくださいね。