現地校での学習

日米教育お役立ち情報

~“言葉のハンデ”をどう乗り越える? ~

言葉も理解していない子供を、現地の学校に入れて「ガンバって!」と言っても、どう頑張ったらよいのでしょうか。決して「能力」が劣っているわけではなく、一時的に言葉のハンデを背負っているだけなのです。言葉が理解できないために、学ぶことができない時間を『空白の時間』と呼んでいますが、この時間を漫然と過ごさせることはできません。親はもちろんのこと、大人の手で彼らを上手く導いていかなければならないと考えます。

1)授業に参加できるようになるには、5年~7年かかる。 

現地校に入学・編入した年齢、日本語力にもよりますが、授業についていけるようになるのに、平均5年から7年かかると云われています。幼少期から英語圏で育っている子供は、更に年数を要するでしょう。母語と第二言語である英語を同時にインプットしようとするからですね。A,B,C・・・を教える前に「あ、い、う、え、お」を教え、日本語で考え発言できるようにしておきましょう。学習能力が弱いと、現地校で学んでいくうえで支障をきたします。
第二言語で学習する子供へは、長い時間がかかることを理解し、見守ってやる必要があります。

2)知識とアイデアが勝負

現地校で学んでいくためには、英語力をつけながら学習していくことしかありませんが、同時に日本語で知識と想像力(アイデア)を育てることが大切です。抽象的な言語(目に見えないもの)も育っていると、現地校で学んでいくことが楽でしょう。それには、本をたくさん読ませること、いつも読み聞かせをしてあげることです。
日本でも読み書きの能力が成績に関係しているように、現地校でもReadingとWritingの力がすべての教科につながっています。Readingの力が弱ければ、Social Study(社会)や算数の文章問題に支障をきたします。また「書く」ということは、考えなければならないのですが、その力が弱ければ、ブックレポートやエッセイなど自分の考えを表したり、アイデアを求められるときに困難な状況になります。テストでも、答えを記述式にしていることが多く、これも“言葉の厚い壁”と言わざるを得ません。知識、アイデア、抽象言語力に長けている子供は、言葉の壁を短時間で乗り越えていけるわけです。
「英語」を習うことも重要ですが、書くための知識やアイデアを、頭のコンピューターの中にファイルしておくこと、これらも現地校でサバイブしていくための知恵ですね。

3)授業内容を理解させていく

先生が話していること、説明していることが理解できない状況下でしなければならないことは、簡単でもよいので、現在習っている単元を、日本語で理解させておくということです。家庭の中も
英語で、母親も英語で教育する自信がある場合は別ですが、そうでなければ、日本語で理解をさせてください。たいへん時間がかかりますが、この地道な努力が、現地校で学んでいけるかどうかの分かれ道となります。

4)宿題は親子で取り組む

英語力が充分でない中で、たくさん出される宿題をこなすのは至難の業です。親子でコツコツ取り組みましょう。時々「親の宿題になっていますが、これで子供のためになるのでしょうか?」と言う質問を受けることがあります。「絶対にお子さんのためになります。英文を写すだけでも勉強になりますから」と、私はお答えしています。宿題は、必ず提出しなければならないことを先ず教え込むことが大切ですから、一緒に取り組んでください。文章は大人が作成しても、アイデアは子供が出すこと、調べる必要があれば、一緒に調べ、最後は子供が仕上げること。このルールを守って続けていけば、必ずや、一人でこなしていけるときがきます。現地校は、宿題の提出状況や内容が成績に影響しますので、おろそかにはできません。

5)現地校での学習を支援する日本語教育を

母国語を伸長させることで、英語を取り込んでいきますから、海外での「日本語教育」はたいへんに重要です。現地校で学んでいくための“後押し”になる日本語を育てるということです。
よく「何語でもよいから、一つの言語を育てておくことが大切ですよね」と質問される方がいますが、何の言葉でもよいということはありません。親が子供を育てるのですから、特に「母親が対応できる言葉」であることが基本となります。それが「母語」なのです。

 “言葉のハンデ”を抱えながら、現地校で学んでいくためには、強力な「日本語」による支援が欠かせません。それを乗り越えていく精神力と、親と子のチームワークも大切な要素になるでしょう。
長い年月を経て、それぞれの言葉で思考できるようになったとき、二つの言語は独立し、お互いが切磋琢磨して育て上げられていきます。言語だけでなく、柔軟な思考をもった人間に成長することを願っています。